僕のお気に入りアルバム
(管楽器入りのジャズ.パート2)

僕の個人的な思い入れのあるジャズ系アルバムを紹介します。このページは管楽器入りアルバムのパート2です。

  Doin' the Thing/Horace Silver
  Cannonball Addarley Quintet in San Francisco
  Go/Dexter Gordon
  Newk's Time/Sonny Rollins
  Blue Soul/Blue Mitchell
  New Soil/Jackie Mclean
  Dippin'/Hank Mobley
  Quiet Kenny/Kenny Dorham
  

ドゥーイン・ザ・シング/ホレス・シルバー
Doin' the Thing/Horace Silver (Blue Note)

 ハードバップ/ファンキージャズの花形バンドはアート・ブレイキー、ホレス・シルバー、キャノンボール・アダレイのバンド。シルバー・バンドの最盛期はフロントがジュニア・クックとブルー・ミッチェルのときで、このアルバムはこのメンバーによる唯一のライブ盤。もう熱いの何のって。やっぱりジャズはライブ!
 シルバーのピアノは「ヒップ」という言葉がピッタリ。打楽器的な奏法でシンプルでアーシーなフレーズを弾く中、アウトした(わざと調性を外した)フレーズをときどき入れる。それがユーモラスかつカッコイイ。
 ライブの熱気の伝わる分、このアルバムをまっさきに勧めるけど、同じメンバーのスタジオ盤の「Blowin' the Blues Away」、「Horace Scope」も最高。どちらもシルバーの名曲が詰まっている。

キャノンボール・アダレイ・イン・サンフランシスコ
Cannonball Addarley Quintet in San Francisco (Riverside)

 キャノンボール・アダレイのファンキージャズを「大衆に迎合しすぎ」と批判する人もいたらしいけど、そんなことはどうでもいい。音楽的にも最高レベルだし、スイングするし、楽しい。弟のナットのコルネットも絶好調。そして何よりこの手の音楽をやらせたら手が付けられないほどいいのが、ピアノのボビー・ティモンズ。ブレイキーのバンドで<Moanin'>を大ヒットさせた後、このバンドに移ってきて、このアルバムを大ヒットさせた立役者で、その畳みかけるようなファンキーフレーズにハマると、病み付きになる。1曲目の<This Here>は彼の作品。
 このアルバム以外のキャノンボール・アダレイ・バンドのアルバムでは、「Them Dirty Blues」,「At the Light House」がいい。これらは全部、リズム隊が強力コンビのサム・ジョーンズ(b)とルイス・ヘイズ(ds)。また数年後、ロックビートを取り入れたジャズロック(なつかしい言葉!)がブームになったときに出した「Mercy, Mercy, Mercy」は表題曲が大ヒットした。この曲もたいへんに魅力的。異色作で彼がブラジルで現地ミュージシャンと吹き込んだ「Cannonball Addarley and Sergio Mendes」は、楽しく明るいボサノバ集でゴキゲン。

ゴー/デクスター・ゴードン
Go/Dexter Gordon (Blue Note)

 デクスター・ゴードンはロリンズと並んで僕の好きなテナー奏者。ただしこれ1枚!という飛び抜けてるのがないような気がする。いつもマイペースでゆっくりやってます、という感じである。だからどれを聴いても安心だ。速い曲でもゆったりと聴かせてしまうフシギなテナー。このアルバムはソニー・クラークとの共演のワンホーン編成で、同じメンバーでもう1枚「Swinging Affair」というアルバムがあり、甲乙付けがたい。他にもゴードンの素敵なアルバムはたくさんあるけど、「Panther」は隠れ名盤。トミー・フラナガンを入れたワンホーンで、<Chrismas Song>なんかが入っている。

ニュークス・タイム/ソニー・ロリンズ
Newk's Time/Sonny Rollins (Blue Note)

 僕は50年代のロリンズのサウンドやフレーズが大好きだ。よく歌うメロディで楽しい。デクスター・ゴードンもそうだけど、ワンホーンがいい。一般にロリンズの代表作というと「サキソフォン・コロッサス」だけど、僕にとってはこのアルバムが最高。ウィントン・ケリー、ダグ・ワトキンス、フィリー・ジョー・ジョーンズのリズム隊は「サキ・コロ」より数段躍動感がある。
 他にも僕の好きなロリンズのアルバムというと、まずハンプトン・ホーズやバーニー・ケッセルとやった「コンテンポラリー・リーダーズ」。いかにも気楽にセッションしてる感じがいい。ブルーノートの「Sonny Rollins vol.2」。これは恐ろしく強力。J.J.ジョンソンのトロンボーンとの掛け合いも圧巻、それを煽るのは例によってブレイキー、ピアノはホレス・シルバーとモンクが弾き分け、ベースがチェンバース。なんともスケールの大きな演奏だ。それとプレステッジの「With the Modern Jazz Quartet」の中に数曲入っているワンホーン・セッションでは、ジャズのアドリブのお手本のようなメロディアスなソロを聴かせてくれる。

ブルー・ソウル/ブルー・ミッチェル
Blue Soul/Blue Mitchell (Riverside)

 ブルー・ミッチェルの隠れ名盤。3管編成で、ベニー・ゴルソンが3曲にアレンジのみで参加。ゴルソンは作曲とアレンジがいいのだから、これでよいのだ。フロントに参加しているのはテナーのジミー・ヒースとトロンボーンのカーティス・フラー。リズム隊はケリーのピアノ、サム・ジョーンズのベース、フィリー・ジョーのドラムスと僕好み。もちろんフロントがしっかりしていないのはダメだけど、リズム隊がいいとそれだけで十分という気になるのも事実。まあ例えていえば、リズム隊はご飯とみそ汁みたいなもので、これがおいしければもう十分という気になる。まあそこに焼き肉やトンカツみたいな元気のいいフロントが来てくれてもいいし、魚の煮付けや塩焼きみたいな、渋いけど飽きの来ないのが来てくれてもいい。ブルー・ミッチェルはそういう例えでいえば、アジフライのような存在か。エビフライの華やかさはないが、気軽な気持ちで味わえるし、いつ食べてもおいしい。
 一般的にミッチェルの代表作とされているのは「Blue's Mood」。こちらはワンホーン編成だが、ピアノはここでもケリー。<I'll Close My Eyes>でのイントロ、ソロはとりわけ圧巻。
 ちなみに右上の写真は、僕の持っているJazzland盤(LP)のもので、Riverside盤はLPもCDもダサいデザイン。

ニュー・ソイル/ジャッキー・マクリーン
New Soil/Jackie Mclean (Blue Note)

 ジャッキー・マクリーンは僕の大好きなアルトサックス奏者。人柄が滲み出るような音色とフレーズがすごく個性的。この人の音を聴いていると、ジャズ、いや音楽というのはこんなふうに一生懸命やっていけばかならず個性が滲み出てくるんだ、という勇気さえ湧いてくる。これは想像だけど、マクリーンは何とかパーカーのように吹きたかったし、努力してきた。でも結局パーカーのようにはなれず、気がついたら自分の音楽になっちゃっていたのだ。これこそ天然モノの個性。マクリーンそのものなのだ。
 さて、このアルバム、1曲アブストラクトな曲が入っている他は、楽しい曲がいっぱい。これはピアノのWalter Davis Jr.のおかげ。マクリーンの相棒を務めるトランペッターはドナルド・バード。バードはけっこう締まらないフレーズを吹くことが多いけど、このアルバムではもいつになく締まりのあるフレーズが多く好調。
 マクリーンの他のアルバムでオススメは、地味なアルバムだけど「Fickle Sonance」(Blue Note)。これは「Cool Struttin'」でも共演したピアノのソニー・クラークが一緒だが、クラークがいい曲をたくさん提供している。

ディッピン/ハンク・モブレイ
Dippin'/Hank Mobley (Blue Note)

 何しろフロントがモブレイとリー・モーガン。活きが良くて楽しさ一杯。とくにこの中の<Ricado Bossa>は名演。イーディ・ゴーメの歌でヒットした<Gift>と同じ曲。ピアノのハロルド・メイバーンが例によって単調で音数が多いけど、まあ彼にしてはそれほど悪い出来ではない。ドラムスのビリー・ヒギンスはこういう8ビートのジャズがうまい。もちろん4ビートも最高だけど。
 モブレイはこの頃が一番脂が乗っている。音もクリーンだし、フレーズもよく歌っている。1955〜57年ぐらいはもう少しモサモサした音で、ちょっと冴えない感じだけど。この人の音やフレーズ、個性がないとか言う人がいるけど、とんでもない。マクリーン同様、「どうしても私が吹くとこうなっちゃいます」的な音だ。

静かなるケニー/ケニー・ドーハム
Quiet Kenny/Kenny Dorham (Prestige)

 渋いプレイヤーが続くけど、ケニー・ドーハムも地味ながら個性的。ちょっと詰まったような音、リー・モーガンの明るく輝かしい音に対抗する気なんかハナッからありませんよ、という音。モブレイのトランペット版という気がしないでもない。ドーハムは年代的にはモーガンより古く、むしろクリフォード・ブラウンの世代。パーカーとも共演している。
 このアルバムはワンホーン。冒頭の名曲<Lotus Blossom>がカッコよくて気持ちいいんだけど、何度も聴いていると<Alone Together>や<My Ideal>のようなバラードが胸に迫る。何にも凝ったことはしていないけど、シミジミと切々と歌う。バックのトミー・フラナガン(ピアノ)はバラードで真価を発揮するタイプだし。チェンバースのベースもドッシリと響く。
 ドーハムの他のアルバムではマクリーンと2管編成のライブ盤「Inta Somthin'」が好き。

 

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