僕のお気に入りアルバム
(2009年版・最近のお気に入り)

このページではここ最近(1,2年以内)の僕のお気に入りアルバムを紹介します。中にはだいぶ以前にリリースされたものもありますが、僕にとっては新譜なのです。(2009年2月作成)

 [日本]
  ・おぼくり/朝崎郁恵
  ・ピュア・アコースティック/大貫妙子
 [アメリカン]
  ・Live at Blues Alley/Eva Cassidy
  ・The Asylum Years/Judee Sill
  ・Just A Little Lovin'/Shelby Lynne
 [ブラジリアン]
  ・アンチーガス・カンチーガス/ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート
  ・Amendoeira/Bebeto Castilho
  ・Meia Noite/Edu Lobo
  ・スタンダードを歌う/ガル・コスタ
  
[日本]
おぼくり/朝崎郁恵

 朝崎郁恵さんと同じ奄美の加計呂麻島出身のうら若き女性から「これぜひ聴いてみてください」と渡されたのがこのCD。正直なところ、「ピアノ伴奏で奄美の島唄」というのは、あまり興味をそそられなかった。ところが聴いたとたん、痺れた。声に何とも強烈な説得力があり、深みがある。そしてピアニストのセンスが抜群で、相性も素晴らしい。不思議なマッチング。とりわけ「嘉義丸のうた」の途中でピアノが入ってくるあたりで、思わず涙が溢れてきてしまう。以来、彼女のファンになり、東京でのライブに足を運ぶようになった。彼女はもう70歳を超えているが、元気そのもの。伴奏がサンシンでもピアノでも、彼女自身の歌い方はまったくブレない。本物とはこういうものだ。
 加計呂麻は僕にいろんな形で良い刺激をたくさん与えてくれる。ちなみに、このHPのトップページの写真も、実は加計呂麻の浜なのです。

ピュア・アコースティック/大貫妙子

「おすすめアルバム」コーナーの中の「ちょっとボサノバ」ページでも大貫妙子さんのアコースティックサウンドのアルバム「チャオ」を紹介しているけど、彼女の声にはアコースティックが絶対に合うと思う。このアルバムはタイトルどおりのピュアなサウンド。伴奏のフェビアン・レザ・パネのピアノが絶品! 何と美しいサウンドで歌を盛り立てていることか。ちょっとクラシック調のストリングスの音も美しい。


[アメリカン]
Live at Blues Alley/Eva Cassidy

 なんて素晴らしいシンガーなんだろう! 1曲目の最初の歌声を聴いただけで、鳥肌が立ってきた。うまいだけじゃなくて、心が揺さぶられる。ジャズを歌うとジャズシンガー、フォークを歌うとフォークシンガー、ソウルを歌うとソウルシンガーになる。いっぽうで、何を歌っても彼女の歌になっている。本物の音楽というのはこういうものなんだ。「音楽スタイル」という衣装を替えても、彼女の本質的なところは何も変わらない。そのことこそ、僕が目指す音楽のゴールであり、彼女はそれを早々と実現した。33歳という若さで皮膚癌に命を奪われたというのも、実は天国にいる音楽の神様に呼ばれたのにちがいない。彼女のギターも味わい深く、独特の魅力を放っている。
生前はほとんど知られることもなく、インディーズのアルバムを2枚出しただけ。でも死後、人気が高まり、未発表音源が4枚リリースされた。他のアルバムもすべて良いが、中でも個人的に好きなのは「Time After Time」と「Imagine」。
ちなみに彼女の絵も、その音楽に匹敵するほど素晴らしい。彼女のことを知るには「Eva Cassidy Arkwork」という愛情溢れるウェブサイトが超オススメ。彼女の絵も見ることができる。
それにしても、こんな素晴らしい歌手のアルバムが日本盤で1枚も出ていないという事実には、驚きを超えて呆れてしまう。

The Asylum Years/Judee Sill

 キャロル・キング、ローラ・ニーロといったシンガーソングライターが一世を風靡した1970年代のアメリカに、こんな素晴らしいアーティストがひっそりと存在していたなんて、驚きである。たまたま最近ある場所で流れているのを耳にして「これ、いったい誰っ!」。自分の知らない音楽はまだまだいくらでもあるんだなあ、と当たり前のことを改めてしみじみを感じた。ドラッグに溺れ、30代半ばで終えたその破滅的な人生からは想像できないような、澄み切った声と美しいメロディ。内面はとても純粋な人だったにちがいない。彼女の作る曲は和音とベースラインがとてもシャレている。そしてギターの音色と音使いが抜群。
この2枚組アルバムは生前残した彼女の2枚のアルバム("Judee Sill"と"Heart Food")全曲に、ソロライブ音源やデモテープ音源を加えたもので、それらの追加音源がまた素晴らしい。オリジナルアルバムでは後から音を加え、音を加工して、お化粧を施してあるのに対して、これらのボーナス音源からは純粋に100%彼女自身の素顔の音を聴くことができる。

Just A Little Lovin'/Shelby Lynne

 このアルバムの「この胸のときめきを」をラジオで聴いて、ジーンと来てしまった。この曲、エルビスやダスティ・スプリングフィールドの歌でおなじみの曲で、僕はどちらかというと嫌いな曲だったのに。歌が切なげに迫ってくるうえに、サウンド全体の音数が少なくスペース感が実にいい感じ。このアルバムはダスティ・スプリングフィールドのレパートリーをカバーしたアルバム。ダスティはどちらかというと大げさに表現するタイプだけど、Shelbyは感情を抑えて、ジワッと聴かせる。それがシンプルの極致というべき素晴らしいバックと見事に調和。彼女は元々カントリーシンガーで、歌のうまさは申し分ない。ノラ・ジョーンズのオトナ版というところか(あ、僕はノラ・ジョーンズも大好きです)。


[ブラジリアン]
アンチーガス・カンチーガス/ヘナート・モタ&パトリシア・ロバート
Antigas Cantigas/Renato Motha & Patricia Lobato  

 ヘナートのギター/ボーカルとパトリシアのボーカルによる夫婦デュオ。パトリシアの声はこの世のものと思えないほど美しく澄み切っている。ヘナートのギターもしっとりといい音を出している。二人のサウンドには愛が詰まっていて、崇高な雰囲気さえ漂う。ボサノバ的ブラジル音楽だけど、ボサノバというわけではない。汚れなき天上のサウンド、というところが「物足りない」と感じるときもあるけど。

Amendoeira/Bebeto Castilho

 僕の大好きなタンバ・トリオ/タンバ4でベース、フルート、ソロボーカルを担当していたベベートは素晴らしいミュージシャン。僕はブラジル音楽好きのフルート奏者にはベベートを聴くことをいつも勧めている。そしてボサノバのベースの弾き方を悩んでいるベーシストにも、ベベートを聴くことを勧める。また、彼の歌は「良質のボサノバ」そのものだ。クールで、味がある。
 このCDは30年ぶりのリーダーアルバムで、年齢から来る衰えがミジンも感じられない。というより、益々、歌にも深みが出てきた。ファンとしてはこの上なくうれしい。全体の軽やかでさわやかなサウンドが実に心地良いオトナの音楽。
 ちなみに、ベベートは1998年にタンバ・トリオで来日して、サバス東京(現コパ東京)で素晴らしいライブをやった。このときは今は亡きヘリシオ・ミリートのパーカッションも素晴らしかった。

Meia Noite/Edu Lobo

 エドゥ・ロボの1995年のスイートなアルバム。僕にとってのエドゥ・ロボのイメージはどちらかというと「エキゾチック」とか「一風変わった」というものだったけど(ジョビンとの共演アルバムは別として)、このアルバムを聴いてイメージが変わった。バラード調の曲ばかりで、エドゥ・ロボのロマンチックな面が満開である。人間誰でも年齢を重ねてくると、そうなる傾向があるようだ(僕もそうみたい)。それはさておき、半分以上の曲で伴奏しているマルコ・ペレイラのギターの何と美しいことか! これを聴くだけでも価値がある。  

スタンダードを歌う/ガル・コスタ
Todas Coisad E Eu/Gal Costa  

 ブラジル音楽界の大姐御、ガル・コスタの2004年の作品で、サンバカンソン系の珠玉のスタンダードをしっとりと歌う大傑作。いわゆるガルにとっての最盛期のアルバムにはロックサウンドを大胆に採り入れたり、叫び気味に歌う曲が多く、アルバムを通して安心して聴ける作品がなかったけど(僕の個人的趣味の問題です)、このアルバムは全編、とびきり気持ち良く聴ける。上記のエドゥ・ロボのところでも書いた「人は歳と共に丸くなっていく」という説を完全に裏付けている。もともと最高の声質を持っているガルがこういうふうに歌えば、向かうところ敵なし、の感がある。このアルバムよりさらにあとの2006年に来日したときは、ジョビン曲中心のボサノバライブだった。貫禄十分で、これも素晴らしかった。

 
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