僕のお気に入りアルバム
(ウェス・モンゴメリー)

僕の大好きなウェス・モンゴメリーのアルバムを紹介します。全アルバムを紹介したくなってしまうのをグッとガマンして、とりあえずコンボ演奏ものを5枚ほど。

  Smokin' At The Half Note
  Full House
  Wes Montgomery Trio
  Groove Yard/Montgomery Brothers
  Far Wes
  

スモーキン・アット・ザ・ハーフ・ノート/ウェス・モンゴメリー
Smokin' At The Half Note (Verve)

 とにかく<No Blues>があまりに凄い。これを聴いてジャズ・ギターを始めた人、あるいはギターをやめた人は数知れない。僕もいまだに聴くたびに興奮。その<No Blues>のほとぼりが醒めたころ、他の曲の凄さがわかってくる。とりわけ、初めは地味に聞こえていた<If You Could See Me Now>。バラードなのだが、ウェスのソロはブルース・フィーリングあふれ、その構成力と音符のタイミングには舌を巻く。残りの3曲は実はスタジオ録音である。この中では<ユニット・セブン>が圧巻。ブリッジ付変型Cブルースだが、ウェス流のモダンなブルース解釈セオリーによってGmのブルースのようにも聞こえてしまうところがミソ。
 なお、現在「スモーキン・アット・ザ・ハーフ・ノートVOL.2」として発売されているCDは、ヴァーヴレーベルの所有するハーフノートのライブ演奏をまとめたもの。本アルバムと上記2曲がダブり、どちらか1枚買うのならVOL.2がお勧め。数あるウェスの<Four On Six>の中のベスト演奏や、絶品の<Misty>などが収録されている。
 最後に、これだけの演奏をウェスから引き出したウィントン・ケリー・トリオに感謝。

フル・ハウス/ウェス・モンゴメリー
Full House/Wes Montgomery (Riverside)

 リバーサイド時代唯一のライブ盤であり、エキサイティングな大名盤である。ウィントン・ケリーら当時のマイルス・デイビス・バンドのリズム隊にジョニー・グリフィンを加えた、レコーディングのためのライブ・セッション。全員ノリノリ。ケリーも絶好調。ケリー・トリオとはこの後1965年に行動を共にし、レコーディング(上記「スモーキン・アット・ザ・ハーフ・ノート」)を残しているほか、ラジオ番組、ニューポート・ジャズ祭に出たりもしている。また、ヨーロッパに渡ったグリフィンとは1965年のヨーロッパ・ツアー時に再共演を果している。
 ウェスのオリジナル<フル・ハウス>、<キャリバ>、<S.O.S.>はとくに凄まじい演奏だし、曲も魅力的だ。ライブのせいか、いつもより多少ピッキングが強い感じ。それが気迫となって伝わってくる。そんな中に一曲、<アイブ・グロウン・アカスタムド・トゥ・ハー・フェイス>が優しさ溢れるしみじみとしたバラードで、泣けてくる。

ウェス・モンゴメリー・トリオ
Wes Montgomery Trio (Riverside)

 僕が初めてウェスの魅力に触れたのがこのアルバム。オルガンのメル・ラインを加えた、ウェスののレギュラートリオによる、ウェスのリバーサイドのデビュー作。このウェス〜メルのコンビの最高傑作は後の「ボス・ギター」に譲るとして、僕にとって思い出深いのはこちら。多くのアーティストのデビュー盤には絶対的な魅力がある、というのが僕の経験則。それまでにもレコーディングは何回か経験しているものの、ウェスにとってリバーサイドのデビューは特別のものだったに違いない。このアルバムにはニューヨークのジャズにないインディアナポリスの香りが漂い、それが個性的な雰囲気、魅力をもたらしているように思う。すでにウェスの音楽的完成度は非常に高い。そして個性的だ。メル・ラインはウェス以上にインディアナポリス的というか、ジミー・スミスやジャック・マクダフのようなコテコテっぽさがない、見方によっては洗練されたサウンドの持ち主で、ウェスとのコンビは最高。

グルーブ・ヤード/モンゴメリー・ブラザース
Groove Yard/Montgomery Brothers (Riverside)

 ウェスの兄弟バンド、モンゴメリー・ブラザースの最高傑作であり、地味ながら僕の大好きなアルバム。取り上げた素材の良さに加えて、弟のバディの緻密なアレンジがこのアルバムの質を高めている。1曲あたりの演奏時間が比較的短いが、その分アドリブの密度が濃い。つまり、テーマもアドリブもほとんど同等の比重で楽しめるわけである。そしていつもながらの兄弟による寛いだアンサンブル。バディは優れたピアニスト/バイブ奏者だが、このアルバムではピアノに専念(バイブの調子が悪かった、というのが本当の理由らしい)。ファンキーで歯切れよいタッチは十分に魅力的である。モンクはこのころは電気ベースではなく、ウッドベースを弾いている。

Far Wes/Wes Montgomery (Pacific Jazz)

 ウェスがリバーサイドレーベルで衝撃的なデビューを飾る以前にPacific Jazzレーベルの吹き込んだ録音をCD化したもの(輸入盤で簡単に手に入る)。モンゴメリー兄弟を中心に、ゲストにハロルド・ランドやポニー・ポインデクスターを加えた演奏。
 このころのウェスの演奏は後の演奏に比べると地味。オクターブもそれほど多用していない。「うわ〜! 圧巻!」という派手な演奏ではない。だけど、素晴らしい。僕はたまらなく好きである。ウェスの誠実さが伝わってくる。ウェスの音楽に対するひたむきさが伝わってくる。ちょっとコモリ気味なギターの音が、せつない。テクニックや音楽性は、すでに完成されている。一般的な代表作ではないけど、僕にとっては一生ものの愛聴盤。    

 

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