小泉清人による「ボサノヴァ・アルバム/上杉優&小泉清人」曲紹介


曲に対する僕の個人的な思いなど交えて書いた紹介です。

01 Voce Ja Foi A Bahia? バイーアに行ったかい?

ドリヴァル・カイミの名曲です。僕はアストラッド・ジルベルトやマリア・クレウーザの歌で馴染んでいるのですが、優ちゃんの自然な歌い方が魅力的です。短いトロンボーンのソロも歌心いっぱいです。エンディングはちょっとジャズっぽくしてみました。

02 Dindi ジンジ

言わずと知れたジョビンの名曲。何度も演奏している曲ですが、飽きることがありません。とは言え、ちょっとヒネってみたくなり、今回は最後のブリッジのあとで「1音下げる」という珍しい転調をしてみました。

03 Saudade Da Bahia バイーアの郷愁

これもドリヴァル・カイミの曲で、僕はその昔、高校生のときにバーデン・パウエルの熱気溢れるギター演奏で聴いてシビれました。その後、ジョビンとカイミの共演アルバムのゆるい演奏が気に入り、今回の演奏では、そのイントロを使わせてもらいました。エンディングはジョアン・ジルベルトがやりそうな感じにしてみました。優ちゃんのトロンボーンが美しい!

04 O Pato ガチョウのサンバ

昔買ったジョアン・ジルベルトのLPレコードに入っていた曲で、ボサノヴァにもずいぶん楽しい曲があるモンだと思っていましたが、もともとはサンバの曲だったということを後から知りました。
ここでは優ちゃんの歌と僕のギターだけで、楽しく演奏しました。

05 Insensatez ハウ・インセンシティヴ

ジョビン作の、クラシカルな気品が漂う美しく気品のある曲。僕はボサノヴァを聴き始めた頃にアストラッド・ジルベルトの歌で覚えました。この曲、ジャズ・ピアニスト、デューク・ピアソンがソロ・ピアノで演奏しているのが素晴らしく、僕は大好きです。

06 Influencia Do Jazz ジャズの影響

題名から察せられるように、コード進行もジャズっぽく、フォー・ビートでやってもおかしくないような曲です。そんなこともあってか、ブラジルでもあまり純ボサノヴァの人たちは採り上げていないようで、ジャズ寄りの人たちがよく演奏しています。ジャズ・ミュージシャンである僕と優ちゃんにはピッタリの曲かもしれません。トロンボーンのソロが快調です。

07 Manha De Carnaval カーニヴァルの朝(黒いオルフェ)

映画「黒いオルフェ」(1960年公開)で使われた曲。この映画ではジョビンとルイス・ボンファが素晴らしい曲を数曲ずつ提供していますが、この曲はボンファの曲です。いちばん有名な曲であるため、「黒いオルフェ」という曲名で扱われることもあります。
ここではギターにおけるEマイナー独特のヴォイシングを使ったイントロにしてみました。

08 Samba De Uma Nota So ワン・ノート・サンバ

この曲は僕が高校生のときに買ったジョアン・ジルベルトの「4曲入りレコード」に入っていました。当時レコード針を乗せたり上げたりしながら、コードを探ったり、歌詞を聴き取ってカタカナで書いたりしたものです。僕にとってはボサノヴァの入口みたいな曲。

09 Corcovado コルコヴァード

有名な「ゲッツ/ジルベルト」におけるこの曲の演奏では、冒頭部でアストラッド・ジルベルトがジョビンのピアノをバックに英語で歌います。僕はその部分が好きで、優ちゃんの歌と僕のギターで同じようにやってみました。そんなわけで、このアルバムで唯一この個所だけ、優ちゃんが英語で歌っています。間奏部の転調は後年のジョビンのアレンジをいただきました。

10 Seu Encanto ザ・フェイス・アイ・ラヴ

「サマー・サンバ」の作曲者として有名なマルコス・ヴァーリの曲。2014年に彼がシンガーのステイシー・ケントと来日したとき、1曲目にこの曲をインストでやり、それを聴いて以来、僕の演奏レパートリーになりました。本CD唯一のインスト曲で、ボサノヴァではなくジャズ・ワルツです。短い演奏ながらトロンボーン奏者としての優ちゃんの実力が発揮されています。

11 Fotografia フォトグラフ

ナラ・レオンのアルバムの中で、この曲を彼女がジョビンのピアノだけをバックに歌っています。それが実に素晴らしく、その演奏にインスパイアされて、ピアノをギターに置き換えた感じで優ちゃんと二人でやってみました。とてもジョビンのピアノの雰囲気にはなりませんが。

12 Brigas Nunca Mais もう喧嘩はしない

ジョビンの曲にはいろんなタイプがあって、ジャズ・ミュージシャンがアドリブの素材にしやすいものとそうでないものがあります。この曲はアドリブが楽しい曲で、トロンボーンとギターそれぞれ1コーラスずつアドリブをやりました。途中で転調しています。

13 Estrada Branca 白い道

アルバムの最後の曲はこれにしよう、と、二人で最初から決めていました。メロディも和音もとてもきれいなジョビンの曲です。音の跳躍が大きかったりで、歌うのがむずかしい曲ですが、優ちゃんは巧みに歌っています。